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猿の佐助と河童ちゃんH 後に佐助が聞いたところによると、河童ちゃんは峰の険しくなる場所 下流から神社を通り、幾重も並べられた鳥居を抜け。そこは、常人の登ってこれる最後の地点です。 薬と布を濡れないように水干の懐に入れ、川は使えぬと河童ちゃんには大きな笠を被り ガサガサと下手で灌木の揺れる音がして、河童ちゃんは振り返りました。 「…小十郎?」 ただ一人、ここを訪れる人間の名を口にします。 バサ!! けれど、葉と小枝に塗れ、雨に濡れた姿で現れたのは、見たことも無い若い男でした。 「 「…そなた、は……いや、」 男も子どもの姿に驚いた様子で口を開きました。 「貴殿がこの川の * 子どもは、キュッと唇をかんで、離します 「……だとしたら、どうした」 そうして男を見据えて答えました。 ザアア…、と雨の音が響きます。 「この辺りに某の忍が参っておりませぬか?」 「しのび…?」 「橙色の髪に迷彩染めの着物、鉢金をはめて顔にこう…」 男は頬と鼻にすっと指を滑らせました。 「泥化粧を」 子どもは得たりと頷きます。 「Ah…, そういう格好の、猿なら知ってんぜ?」 「真にござるか!して、どこに…!?」 勢い込んで尋ねる男に、子どもは左目のまぶたを伏せました。 「生憎、ここから先は人間は入れねえ」 「そうでござったか。しかし佐助は、」 「……さ、すけ?」 始めて聞く名を唇にのせ、今度はあどけなくその目を見開きます。 「某の忍の名にござりまする。佐助は其処にいるのでしょう」 「あれは…猿だから良いんだ」 「人間でござる」 しかし男は間髪いれず答えました。 「 子どもは声を低めます。 「人間でござるよ」 「嘘だ」 「嘘ではありませぬ」 子どもは首を振り、けれど男は頑なに繰り返します。 「あれは、人間ではないと、そう言った!」 「誰がなんと言おうと、某の部下は人間にござります!!」 雷が天に昇り、その光が濁流と森に挟まれた二つの影を照らしました。 男は後ろ髪だけが尻尾のように長い、茶色い髪に、濡れて濃い色に染まった赤い上着と、 赤い鉢巻を身につけています。 その背には二本の長い槍を背負っているようです。 「…声を荒げて、申し訳ありませぬ。しかし猿飛佐助は某が最も信頼する人間であり 男は言葉を失いました。 目の前の、十ほどの子ども しかしその目からは、ぽろぽろと透明な雫が落ちているのです。 雨が矢のように降りしきる中で、その露だけが柔らかに丸く、ゆっくりと白い頬を伝っていくのが、 彼の目に美しく映り、酷く、うろたえさせました。 「も、もも、申し訳ござりませぬ…!!某、決して、断じて!水神殿を傷つけるつもりは…!」 左目をそっと拭い、なおも零れる雫に指を濡らす姿に、先刻までの武人らしい態度は何処へやら、滝の下手で おろおろと手を振ります。 「な、泣き止んでくだされええ!!」 どうすれば良いのだ!お館様アア!!! 錯乱してそう叫ぶと、プハッと吹き出すような音が耳に届きました。 「……?」 「ハ、…ははは…!」 見上げれば、子どもは腹を押さえて笑い声を上げています。 目にはまだ玉雫を乗せて、けれど確かに。 「水神、殿」 「…Ha, 分かったぜ。案内してやるよ」 笠をくいと持ち上げて、その頬には涙の軌跡が残っているというのに、なおも清々しい笑みを見せました。 黒々と濡れた髪に白い肌は輝く満月のようで、左しかあらわにされていない目にも光を浮かべ、そうして ただの子どもの様に見えたその姿が、突然強い存在感を持って男の目に飛び込んできます。 「ついて来な ふわり、と青い不思議な光が、小さな水神の周りに集いました。 |