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お前は本当にOrangeだな。 と、政宗が呟いた。 あんたは本当におれんじが好きですね。 と、佐助は政宗に髪をつままれながらため息を吐いた。 忍びの髪は獣の色をしている。佐助の髪は獣にも見ないような、柿に似た橙に似た、明るい赤毛をしている。 光に透かせば金色に見えるオレンジと、この殿様は異国語の言葉で呼んで、飽くことなく指で梳いている。好いている。 それは良いけど、あんまりひっぱると抜けやすくなっちゃいそうなんで、困ります。 Indeed,万が一この毛が落ちてたらお前が忍んできたとすぐ分かる。 政宗は不穏な目をして笑ったようだ。 独眼竜の左目は月に似た、赤みのない金色である。今は見えないけれど何度も間近で見つめたことがある。 佐助は肩を政宗の腹に預けて、預けさせられて、髪は遊ばれるがままになっていた。 このまま首を裂かれたらおしまいだろう、とは思う。腕を伸ばせば独眼竜が刀に届くことも知っている。もちろん佐助は易々とそうはさせない。竜の体を許された代償というなら軽すぎる緊張感。 けれど、それを理由に首を預けているわけでも、ない。 山吹に、朱を……。 髪に唇をうずめた感触がして、声が消える。 血を擦り込んだみたい? 髪をすく指が止まる。 唇で笑まれた気がした。 笑む意味は佐助には分からない。いつだってこの竜の考えることは佐助には分からない。 お前の忍び装束だって、好いと思うぜ? は? だから、突然そんなことを言われる理由のありかも分かるはずがなくて、佐助はぽかんと口を開けた。 夜着に着替える間もなかった竜の蒼い衣に首を預けて、忍びは今は鎖帷子も身につけていない。黒い肌隠しで闇に脚からとけ込んだ姿。今夜上にまとっていたのは。 木葉の影に隠れるみてぇな、緑のまだらな。 ……。 まあ、要はそういう装束なんですけどね。と正解を知らせてさしあげることはせずに、佐助はゆるく首を傾げた。政宗の言葉が聞きたかった。 お前の本性、隠してるみたいな色だ。 本性、と佐助は小さくつぶやく。 政宗は喉で笑う。 赤い血は生の証だろう。 そりゃあ、…。 ほふった血ではなく。竜の言葉の意味に気づいて、それよりもなお深い可能性に思い至る。 金毛に熱い朱を擦り込んだ橙。 それとは正反対の、暗い緑。 それがお前の色なのだ、と。 ……だから。 何だか一方的にすごいことを言われた気がして佐助は目を覆った。乾いた手は冷たい。冷たく感じるほどに熱いのは。 何て馬鹿なことを、と心の声にため息つけば、どうした、と乾いた声が、何事もなかったかのような涼しい色で額をなぜた。 Ah,お前Orange食ったことないだろ。 …食いものだったの? 南蛮の果物だ。 甘い味がする。と、そう言う掠れた声が甘くて、佐助はこの場から逃げたくなる。 本当に好きだねと、言ってしまったのは自分の方なのだから、始末におえない話だった。 その後≫■
10/03/12
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