戦国☆悩み事相談室








「……」

「どうしたのだ佐助、そのように黙り込んで」
「あんたの中で俺はどんだけお喋りな忍なの」
「悩みがあれば聞くぞ?」
「まず人の話を聞くようになってくださいよ…」
――政宗殿のことか」
「うッ……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「………話したくない、とあれば、仕方ない」
「……」
「色恋の話であれば前田慶次殿が適任でござろうから相談していただけるよう 俺から頼んでや「竜の旦那なんですけどね」――うむ」
「何か俺のこと猿飛猿飛呼ぶんでー、」
「良いではないか。武田の忍ごときと呼ばれるよりは」
「でもあれね、絶対『政岡』さんと同じ位置づけなんですよ」
「政宗殿の乳母殿だったか」
「この場合あんたのね」
「して、それが気に入らぬわけだな」
「まあ…ねえ」
「うーむ。これがお館様のおっしゃっていた“甲斐性の問題”というものにござろうか…」
「酷!相談に乗ってくれる気あるんですか!?」
「そもそも名前を呼んでいただけるような関係になっていたか?」
「そりゃもう。がんばったよ俺!――って言うか、呼んでもらうだけは成功したんですよ…」
「なら良いではないか」
「いや、それがね…」

   *

「…や」
 軽く見開いた左目にじわり、と恐怖を滲ませて、自分を押し離そうとする青い竜の身を、忍びは手つきだけは優しげに 引き寄せる。
「駄目…逃がさないから、ね?」
「やめろ、…猿と、」
 言葉尻を絡め取るように唇に吸い付く。
(柔らかい…)
 舌を捉えて、細身を抱きすくめて。
 そうして攻め立てる内に上向きにさせられた、白い顎を、唾液が一筋伝って落ちる。
 簡単には捕まらない竜の舌を追いかけるのに苦労しながら、けれど迷彩染めの胸元を掴む指が震えているから、 忍は楽しげに目を細めていた。
 舌が捕まらぬならと方向を転じて上顎や並びの良い歯列の裏をなぞれば、びくりびくりと、藍色の着物の内が跳ねる。
「…ん……フ、…」
 鼻奥から洩れる声に色があれば、どれだけ艶やかに染まっているか。
(見せてあげたいくらい)
 舌を絡めたまま、唇を離して。
「…、ア」
 直ぐにも冷える濡れ肌に、ハア――…と零れる竜の吐息だけが熱い。
 頬を薄紅に染め上げているのは、素直に感じ入った快楽の熱が半分、それに対する羞恥の熱がもう半分という処か。
(なら、色で見せなくても分かってるんだろうねえ)
 自分がどんな声を出していたのかなど。
「っん、」
 忍の細い指が撫でる過敏な耳の、その内に響いて。どうしようもなかっただろう。
 だから、白くて、作り物のように綺麗なその薄身を軽く食んで。
「お、前……猿飛…」
――ねえ」
 ふるり、と慄く体を、殊更に強く抱きしめた。
「俺の、名前、知ってるでしょ?」
 …政宗、さん?
 低い声音で流し込めば、耐えかねるように左のまぶたをぎゅっと閉じて首を振り、逃げようともがくのは 分かっていたから。
「…!ッ、や………さ、す、」

   *

「…でね、その後も延々その手で呼んで貰ってもー可愛いのなんのって…」
「……」
「でもそれが祟って、普段は恥ずかしいみたいで呼んでくれないの!何かもう刷り込み?俺が 『政宗さん』って呼んでも  顔真っ赤にして殴りかかる勢いでさー」
「……」
「そこがまた可愛いんだけど正直あれは失敗したかなーなんて思ったり……って旦那!?  旦那鼻血!!」
「……」
「え、ごめんねっ!?でも俺口吸いのくだりしか話してないんだけど…」
「…破廉恥…」
「嘘オォ!!?」

















『某の部下である忍と、某の宿命の好敵手が、破廉恥極まりなくて困っておりまする』

                 ――甲州・武田軍・“お館様命!”さんからのお便りでした。