はらはら舞う雪が頬にかすめるように触れたから、お前のkissに似ていると、つい口に出したが失敗で、忍びは腹立たしいまでに締まりなくニヤニヤと笑っていた。

 残念、俺様雪になってまであんたに口づける気はないね。

 …じゃあ、俺はしてやるよ。

 売り言葉に買い言葉。どうやって、と聞かれても、どうやってでも、と笑ってやる。
 言ったもの勝ち、毒くらわば皿までも、が政宗の信条だった。

 奥州から雪が吹雪いて、お前に触れたらそれが俺だ。Don't forget it!

 ああそうへーえ、と可愛げなく答えて、忍びは。

 あ、雪だ。

 政宗の髪をかきあげる。
 額に冷たいものが触れた。
 その数日後。
 雪の白い真綿を着込んだ庭を前に一服していると、曇った空の雲間の影がふと濃くなった。
 見る間にぐんぐんと近づいて、呆気にとられているうちに、それは政宗が考えていたとおりの影形になって、鳥を手放し庭に降り立った。
 なんとなく、戦場では見慣れていた光景。
 こうして訪ねてくるときには珍しい。気配を消して近づくのとは別の意味で、無遠慮な登場だ。
 口笛一つ。庭の烏に首を傾げてみせる。

 …何事だ?

 影は眉をひそめて、どことなく真剣な顔で、政宗に歩み寄る。
 あらがう間もなく唇が重なった。

 ……。

 ……。

 ……。

 …溶けないか、確かめに来たんだ。

 それだけ。と、言って忍びが退場しようとするのを、気がつけば殴って止めていた。
 その冬佐助は、雪に呼ばれたから、雪に殺されそうになったから、と言いわけしながら何度も奥州に通って来た。



















(だって、唇の上で溶けて消えちまったんだぜ!?)
















10/04/04 掲載
初出:memo(2010/02/02)